糖が酸に変わるまで—むし歯を引き起こす細菌のしくみ
むし歯と歯周病—細菌とエネルギー源の違いから見る病態の分岐点!
口腔内の細菌は、代謝に使うエネルギー源によって大きく2つのグループに分類され、それぞれむし歯と歯周病という異なる疾患に関与しています。
エネルギー源 |
代謝産物 |
関連疾患 |
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糖類(砂糖・でんぷん) |
有機酸(乳酸・酢酸・ギ酸など) |
むし歯 |
ペプチド・アミノ酸 |
アンモニア、硫酸化合物、有機酸(一部) |
歯周病 |
細菌による酸産生とむし歯の進行メカニズム
昔の細菌たちは、唾液中の糖タンパク質などから酢酸やギ酸のような弱い酸を産生していました。しかし、砂糖やでんぷんなどの食品から大量の糖が口腔内に入ってくるようになると…
1.細菌は糖を代謝して“乳酸”という強い酸を産生します。
2.酸によるストレスで、耐酸性のある細菌が増殖しやすくなります。
3.結果として、口腔内pHが低下し、むし歯が進行します。
4.酸性環境で生き残れる細菌が優位になり、細菌の生態系が変化してさらにむし歯が進行します。
まさに「糖による環境の変化が細菌叢の生態を変え、むし歯を引き起こす」という流れです。
甘いものをどう捉えるべき?
糖を完全に避けるのは現実的ではありませんが、
🟢 摂取頻度やタイミングに注意することで、細菌の酸産生を抑えることができます!
🟢 フッ化物配合の歯磨剤や、食後のブラッシング習慣で酸性環境の継続を防ぐことが大切です!
【参考書籍】
伊藤直人 著「カリエスブック 5ステップで結果が出るう蝕と酸蝕を予防するカリオロジーに基づいた患者教育」医歯薬出版