むし歯って感染症なの?
むし歯治療はこれまで「削る治療」が主流でしたが、現在は「削らずにコントロールする治療」へと進化しています。その背景には、病因論の変化 と科学技術の進歩があります。
かつてのむし歯の考え方
以前は、次のような研究結果からむし歯=特定の細菌による感染症だと考えられていました。
1959年のOrlandの動物実験では、無菌環境で育てたネズミには、むし歯が発症しないことが確認されたこと
1960年のFitzgeraldとKeyesの研究では、レンサ球菌がむし歯を引き起こすことが証明されたこと
この発見をもとに、長年「ミュータンスレンサ球菌(MS菌)」がむし歯の主な原因とされ、MS菌が検出される生後19~31か月が「MS菌の感染の窓」と呼ばれて注目されたこともありました。
しかし、現在の研究では「MS菌は常在菌であり、むし歯の原因はそれだけではない」ことが分かっています。
むし歯がないのにMS菌が存在するケースもあれば、むし歯の病変にMS菌がいないケースもあるのです!
むし歯は「感染症」ではなく「多因子によって起こる非感染性の疾患」
最新の研究では…
むし歯は特定の細菌による感染症ではなく、さまざまな細菌が関わり合いながら、多因子(食生活・口腔環境・唾液の性質・歯の質などの要因)によって起こる非感染性の疾患であると考えられています。
この病因論の変遷により、治療方針も大きく変化しました。従来の「削る治療」から、「削らずにコントロールする治療」へのシフトが進み、患者自身の予防と行動変容がより重要視されるようになっています。
これからのむし歯治療の考え方
「むし歯を治す」よりも「むし歯の進行を防ぐ」ことが中心に!
削るのではなく、フッ化物や正しい歯磨き習慣でむし歯の進行をコントロール!
歯科医療の未来は「むし歯のコントロール」を重視
むし歯は 「治療するもの」ではなく「予防し、コントロールするもの」へと変化しています!
【参考書籍】
伊藤直人 著「カリエスブック 5ステップで結果が出るう蝕と酸蝕を予防するカリオロジーに基づいた患者教育」医歯薬出版